人に代わってロボットにできることはロボットを活用しよう、という”ロボットホテル”のアイデアは、澤田社長のものでした。人件費を削減して生産性を高めることを第一義としながら、テクノロジーのショーケースとして話題を集めることも狙っていました。
そして僕がハウステンボスの経営顧問に就き、出席した最初の会議が「変なホテル」の開設準備会議の2回目でした。名だたるメーカー30社あまりの技術者がプレゼンテーションをしましたが、新しもの好きで技術大好きの僕は、そのプレゼンに片っ端からダメ出しをしたのです。その繰り返しと積み重ねの中で、取捨選択やブラッシュアップがなされ、完成形に近づいていったのです。
ハウステンボスでの事業の魅力は、実験的になんでもできることです。アジャイル型の開発で進めていくというのも含めて。最初から完璧を目指してもできっこない。とにかくやってみて、不具合があれば改善していこうと。
お客様から不満が出るという意見もありましたが、ネーミングが「変なホテル」ですよ。それに、「いざとなればスタッフを総動員すればいいじゃないですか」と押し切ったんです。
とにかく着手する、というのがアジャイル型開発のいいところですね。従来のウォーターフォール型の開発では時間もコストもかかるし、完成した時にはすでに次の時代に変わっていて、もはや時代遅れ、となってしまいます。とにかく開発して、随時不具合は直すし、アップデートする。この方針の裏には、明確なロードマップがあったからです。「変なホテル」の発表記者会見では、記者にイチを聞かれたら十を返せるくらいの自信がありました。そうでなければ「変なホテル」なんてできません。
「変なホテル」のコンセプトは、「つねに変化し続けること」です。つまり最初から最高のサービスを提供し、維持するという考え方ではない。変化し、進化し、より良いものをお客様に提供し続ける。ある程度の未完成を承知で、「変なホテル」をスタートさせたのです。